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Child Soldier

社会新報 '04年 6月9日号より(第1回)

リード

アフリカのウガンダ北部では、この1986年以来、神の抵抗軍(Lord’s Resistance Army・以下LRA)と名乗るゲリラが反政府活動を続けており、2万6千人以上の子どもたちが誘拐され、チャイルドソルジャーとして戦場に立たされている。体罰・脅迫・レイプ・仲間の処刑執行・薬物漬け――。ありとあらゆる方法で虐待され、子どもたちの苦しみは続いている。

本文

2001 年、初めて私はウガンダ北部のグル地区を取材した。その時、救出された子どもたちが誘拐中に受けた心の傷を取り除き、社会に復帰させるため活動しているリハビリセンターを訪れた私は、頭部を手斧で割られた少年や、レイプされ生まれた子どもをうつろな瞳で抱きかかえる少女を目にし、大きなショックを受けた。

以来、年に一度同地を訪問して来たが、状況が良くなる兆候はなかなか見られず、今年3月下旬の4度目の取材でも、グル地区に2ヶ所あるリハビリセンターで治療中の、400人近くのゲリラから救出されて間もない子どもたちに出会った。

LRA の残虐さは世界的に悪名高い。なかでも最も残酷なのは、命令通りに動く従順な兵士を作り出すため、誘拐した子どもをその出身村に連れ帰り、親兄弟や顔見知りを殺させることだ。自分の近しい人間を自身の手で殺した子どもたちは、帰る場所を失い、精神的に完全に孤独に陥り、生きる気力を失ってしまう。

なぜLRAがそのような状態に子どもを追い込むかというと、精神的支柱を失った子どもは、思考能力もなくし、どんな命令でも疑問を抱くことなく忠実に遂行する、ゲリラにとって非常に都合の良い機械のような兵士となるからだ。さらに四肢切断や協力しない村への焼き討ち、遊びで子どもを川に投げ込み溺死させるなど、その残虐行為は枚挙にいとまがない。

この赤ちゃんは、誘拐された少女と、その少女をレイプしたLRAの兵士の間に生まれた。LRAは出産直後の少女にも容赦なく、行軍について来られない者は、いかなる理由があろうとも「逃亡の意思あり」として、拷問を加え、ひどいときには殺害する。

そしていったん戦闘が始まれば、子どもを連れた母親であろうと、乳飲み子を背負ったまま銃を手に戦わされるのだ。実際にこの赤ちゃんの母親は、赤ちゃんが助け出された戦闘で、政府軍の銃弾を浴び死亡している。

子どもたちを傷つけるのは、LRAだけではない。誘拐された後、兵士として銃を手に戦闘に参加していたこの少女は、政府軍の戦闘機が投下した爆弾の破片により口を失った。幸い負傷直後に、LRAに追い打ちをかけるため進軍してきた政府軍に救出され一命は取り留めたが、少女の心と体には一生消えない大きな傷痕が残った。

第二回(6月16日号)へ続く