Home> Report> 日刊ゲンダイ掲載原稿/第8回 ラクダは楽じゃない

日刊ゲンダイ掲載原稿

(連載期間)2008年8月23日〜11月29日

ラクダは楽じゃない

ラクダに乗る私

まだラクダと砂漠の洗礼を受ける前の私

世界最大のサハラ砂漠。
サハラとはアラビア語で「荒れた土地」を意味し、その面積はアフ リカ大陸の約三分の一(約1000万キロ平米)を占める。

地熱でユラユラと大気が揺れる中、地平線まで続く砂漠を背景にラ クダにまたがり旅をする。もちろん頭には映画「アラビアのロレン ス」ばりの渋いターバン。

「これぞ、男のロマン!」。

モロッコ第2の都市マラケッシュで「サハラ砂漠、二泊三日150 ドルの旅(ガイド付き)」というポスターを見た私は、迷わずその 場で申し込んだ。

砂漠の日中は50度を超える。
乾燥しているため日本の夏のような不快な暑さはないが、容赦なく 照りつける太陽光線が刺さり、とにかく肌が痛い。

しかし、日が沈むと一転して10度以下まで一気に気温が落ち込む 。
ガイドが作ってくれた、砂と毛布・ビニールをうまく重ね合わせた 砂布団(海水浴場でよくやるのと同じ)で寝るのだが、真剣に凍死 を心配するほどの寒さだった。

しかし何より私を悩ませたのは、砂漠旅行の必須アイテム「ラクダ 」だった。

とにかく彼らは歩き方にリズム感がない。
どこまでも続く砂丘に感動出来ていたのもわずか2時間。
どこまで行っても砂漠しかないし(当たり前だが…)、ジワジワと お尻が熱く、むず痒くなってきた。

慣れない人間は直接ラクダに乗れないため、ガイドが出発前に鞍の ような物を取り付けてくれていたのだが、4時間ほどすると彼らが 足を一歩踏み出すたびに、お尻から激痛が…。

肌はヒリヒリ、お尻はビリビリ、おまけにきめ細かいサハラの砂が ビニール袋の防御を破りカメラまで壊れ……。

町に戻ってシャッターが下りなくなったカメラと、血が付いたパン ツを見た時には、思わず涙が出そうになった。

帰国後、カメラは数万円かけて修理が必要になったが、お尻は軽い イボ痔だったので幸い病院のお世話にならずにすんだ。

「ラクダは楽だ」。

だれが言い始めたか知らないが、その時以来、このダジャレを聞く たび、お尻がムズムズする。
もうラクダと砂漠は懲り懲りだ。

第9回「前髪が…」へ続く